「実家に帰るたび、親の背中が小さくなり、反対に荷物が増えている気がする」
そう感じた今が、実家の片付けを考えるタイミングです。
亡くなった後におこなう「遺品整理」と、親が元気なうちにおこなう「生前整理」。
この2つは、単に時期が違うだけではありません。
もっとも大きな違いは「費用の総額」と「残された家族の精神的ダメージ」です。
この記事では、両者の決定的な違いを一目でわかる比較表で解説し、多くの人がつまずく「親を傷つけずに片付けを促す会話の切り出し方」まで、現場の知見を交えて徹底解説します。
「いつかやる」を「今やる」に変えて、将来の不安を安心に変えましょう。
親の家が心配、整理の話を切り出せず悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
遺品整理と生前整理の違いとは?【比較一覧表】

実家の片付けにおいて、まず押さえるべきは「誰のためにやるか」という視点です。
「遺品整理」と「生前整理」は言葉こそ似ていますが、その性質は「過去の清算」と「未来への投資」ほど異なります。
次の表は、生前整理と遺品整理の主な違いを比較したものです。
実施時期や目的、費用面での違いが一目でわかります。
以下の比較表をご覧ください。これを見れば、なぜ「生前整理」が推奨されるのかが論理的にわかります。
| 項目 | 生前整理(未来への投資) | 遺品整理(過去の清算) |
|---|---|---|
| 実施時期 | 本人が元気なうち(いつでも可) | 故人が亡くなったあと(死後すぐ) |
| 実行主体 | 本人(および家族) | 遺族(相続人) |
| 精神状態 | 思い出を振り返りながら前向きに | 悲しみと焦りのなかで事務的に |
| 主な目的 | ・残りの人生を快適に過ごす ・家族の負担軽減 ・相続トラブルの防止 | ・部屋の明け渡し(賃貸など) ・遺産の分配と処分 ・故人の供養 |
| 意思決定 | 本人の意思で決定できる | 遺族が「捨てていいか?」と迷いながら |
| 費用 | 時間をかければ安く抑えられる | 急な依頼・大量処分で高額になりやすい |
私がこれまでみてきた現場でも、この2つは空気感がまったく異なります。
生前整理は「これ、懐かしいね!」という笑い声が聞こえることもありますが、遺品整理の現場は、時間がない焦りと「もっと話しておけばよかった」という後悔の沈黙が支配しがちです。
家族の絆を深めるイベントにできるのは、間違いなく「生前整理」の方です。
遺品整理前の「生前整理」が必要な理由と3つのメリット

遺品整理ならまだしも、生前整理と聞くと、
「まだ元気なのに、縁起でもない」と親はいうかもしれません。
しかし、生前整理は「死ぬ準備」ではなく、「残りの人生を安全に、豊かに暮らすためのリフォーム」です。
感情論ではなく、実利的な3つのメリットを知っておいてください。
メリット1:残された家族の「金銭的・体力的」負担が激減する
最大のメリットはコストカットです。
遺品整理は、賃貸の退去期限や相続税申告などのタイムリミットがあるため、業者に足元をみられやすく、相場より高い急行料金を払わざるを得ないケースが多々あります。
生前整理なら、自分で自治体のゴミ回収に出したり、複数の業者から相見積もりを取って安いところを選んだりと、費用をコントロールできます。
メリット2:財産の全容が明確になり「相続トラブル」を防げる
家のなかが物で溢れていると、どこに何があるか把握できず、重要な通帳や印鑑、権利書などが紛失するリスクがあります。
生前整理を通じて財産目録を作成し、資産状況を可視化することで、兄弟間での遺産分割協議がスムーズに進みます。
※遺産分割協議とは、亡くなった方(被相続人)の遺産の分け方について、相続人全員で話し合う手続きのことです。
「遺品整理の最中に現金が出てきたが、誰が受け取るかで揉める」といった典型的な相続トラブルを未然に防ぐためにも、生前の整理は重要です。
参考:日本公証人連合会「3 遺産分割協議」
これは現場でよくある話ですが、本に挟まったヘソクリ、古いカバンの底にある通帳、着物の帯に隠された貴金属などは、本人がいないと高確率でゴミとして処分されてしまいます。
【実際のトラブル事例】
遺品整理業者に依頼した際、作業員がポケットに入っていた現金をネコババしたり、本来価値のある骨董品を「ゴミ」として持ち去ったりするケースも起きています。
資産を正確に把握し、守れるのは、記憶がしっかりしている「親本人」だけです。
メリット3:親自身の生活が快適になる
床に物が溢れていると、高齢者の転倒骨折のリスクが跳ね上がります。
生前整理は、親の安全を守るための「防災活動」でもあります。
【遺品整理と生前整理】業者依頼の費用の違いと相場

「結局、遺品整理と生前整理はどちらが得なのか?」
コストを重視する方にとって、費用の仕組みを理解することは重要です。
「業者に頼むと高い」と思われがちですが、ケースバイケースです。
ここでは具体的な相場と、安く抑えるためのプロのコツを紹介します。
【間取り別・費用相場の目安】
業者に依頼する場合の一般的な費用相場は以下のとおりです。
荷物の量や作業員の人数によって変動するため、あくまで目安として参考にしてください。
| 間取り | 費用相場(目安) | 作業人数 |
|---|---|---|
| 1R・1K | 30,000円〜80,000円 | 1〜2名 |
| 1DK・1LDK | 50,000円〜120,000円 | 2〜3名 |
| 2DK・2LDK | 90,000円〜250,000円 | 3〜4名 |
| 3DK以上 | 170,000円〜 | 4〜6名 |
【費用を抑える裏技:買取との相殺】
賢い人は、整理と同時に「買取」を利用します。
特に生前整理の場合、ブランド品や貴金属だけでなく、昭和レトロなおもちゃやオーディオ機器などが高値で売れ、「作業費が実質ゼロ円になった」「むしろプラスになった」というケースも珍しくありません。
遺品整理のドサクサでは見逃されがちな価値も、生前整理ならじっくり査定に出せます。
遺品整理と生前整理の具体的な進め方とはじめるタイミング

遺品整理と生前整理は、置かれた状況によって進め方が大きく変わります。
遺品整理は、限られた時間のなかで片付けと各種手続きを進める必要があり、あらかじめ優先順位を決めておくことが欠かせません。
一方、生前整理は、親の年齢や生活環境を踏まえて、負担の少ない時期に計画的に進めることができます。
特に生前整理では、50代が悩みやすい「親の説得」が大きな壁になりますが、適切な方法を選ぶことで心の負担を抑えながら進められます。
ここでは、遺品整理と生前整理それぞれの具体的な進め方と、生前整理を始める最適なタイミングを年代別にわかりやすくまとめます。
遺品整理は「スケジュール管理」が最優先
遺品整理の進め方は、期限から逆算して計画を立てることが重要です。
特に賃貸物件の退去や相続税の申告期限(死後10ヵ月以内)がある場合は注意が必要です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 遺言書の確認 | 法的な意思表示がないか、最初に確認する |
| 仕分けと貴重品の探索 | 現金や通帳、権利書などの重要書類を探し出し、形見分けする品と不用品を分ける |
| 不用品の処分 | 自治体のゴミ回収や回収業者を利用 |
自分でおこなうのが難しいと判断した場合は、早めに専門業者へ見積もりを依頼してください。
生前整理をはじめる「3つのきっかけ」と年代別アプローチ
生前整理をいつはじめるべきか迷う方も多いですが、早すぎることはありません。
次に紹介するタイミングは、親に提案する絶好のチャンスです。
| タイミング | 内容 |
|---|---|
| 体力や気力の衰えを感じたとき | ・子が50代で体力があるうちにサポートする (親が70代・80代になると、重いものが持てなくなるため) |
| ライフスタイルの変化 | 施設入居や入院・リフォーム (持ち物を強制的に見直す機会となるため) |
| 家族が集まるタイミング | お盆や正月に実家の現状を共有し、今後のことを話し合う |
物量が多い親世代にとっては、判断力と体力がある「今」こそが最適な時期といえるでしょう。
生前整理で効率的に進めるための3ステップ【親を説得するコツ】
親を説得するという課題を乗り越え、挫折せずに進めるための手順を紹介します。
Step1. 小さな場所からはじめる(成功体験)
いきなりリビングや納戸を片付けようとすると、親が強く抵抗する場合があります。
まずは「冷蔵庫内の賞味期限切れの食品」や「洗面台の下の収納」など、判断が容易な場所からはじめてください。
「きれいになって使いやすい」という感覚を共有することが大切です。
Step2. 「捨てる」ではなく「選ぶ」
将来、「親の遺品整理」で後悔しないためにも、親が元気なうちからその気持ちを尊重します。
「捨ててよい?」と聞くのではなく、「これからの生活に必要な一軍はどれ?」と問いかけましょう。
着物や思い出の品は無理に処分せず、保留ボックスを作るのも有効です。
Step3. 財産・情報の整理
不用品を減らすのと並行して、通帳や印鑑、保険証券を整理します。
また、スマートフォンやパソコンのログイン情報など、デジタル資産の管理も忘れずにおこないましょう。
【親の遺品整理と生前整理】自分でやる?業者に頼む?判断基準と業者選びの注意点

遺品整理や生前整理では、遠距離介護や仕事で忙しい場合、すべての整理を家族だけでおこなうのは物理的に困難かもしれません。
無理をして共倒れになる前に、プロの力を借りる判断も必要です。
ここでは、業者に依頼すべき境界線と、失敗しない業者の選び方について解説します。
業者依頼を検討すべき「限界ライン」
下記の条件に当てはまる場合は、自力での解決は難しいかもしれません。
- 実家まで車で片道2時間以上かかる
- 家が広く(3LDK以上)、家具や家財があふれている(ゴミ屋敷状態を含む)
- 大型家具(タンス・ベッド)の搬出が必要
- 親が認知症で、片付けてもすぐに元に戻ってしまう
このような状況では、無理をせずプロの力を借りることが現実的な選択肢となります。
では、どのような業者を選べば安心して任せられるのでしょうか。
「やばい業者」を避けるためのチェックポイント
残念ながら、この業界には高額請求や不法投棄をおこなう悪徳業者が存在します。
次のポイントを必ず確認してください。
- 資格の有無:「遺品整理士」などの民間資格だけでなく、家庭系一般廃棄物収集運搬業の許可(または提携)があるか。
- 見積もりの透明性:「一式〇〇円」というどんぶり勘定は危険です。「人件費」「車両費」「処分費」が明確か確認しましょう。
- 追加請求の有無:「見積もりあとの追加請求は一切なし」と明記されている業者を選びましょう。
信頼できる業者は、訪問見積もりを無料でおこない、要望を丁寧にヒアリングしてくれます。
クレジットカード払いに対応しているか、実績が豊富かどうかも判断材料になります。
【将来の遺品整理負担を減らすために】生前予約という選択肢

親が「まだ死なないから片付けなくていい」と頑なに拒否する場合や、認知症の進行により意思決定が難しくなった場合、無理に生前整理を進めると関係が悪化してしまいます。
そのような八方塞がりな状況における「次善の策」として注目されているのが、遺品整理の「生前予約」です。
「遺品整理を生前に予約することは可能ですか?」という疑問を持つ方も多いですが、可能です。
これは「死後事務委任契約」などの法的枠組みを利用し、自分が亡くなった後の部屋の片付けや手続きを、元気なうちに業者と契約しておく仕組みです。
生前予約の流れ「4ステップ」

一般的には、本人(親)と整理業者との間で契約を結びます。
費用の支払いについては、トラブルを防ぐために信託銀行などを介して管理し、作業完了後に支払われる仕組みを採用している業者が安心です。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①見積もり・プラン決定 | 整理業者が来て、現地調査をおこない、作業内容と費用を確定 |
| ②契約締結 | 本人・業者・保証人(子どもなど)の間で契約書をかわす |
| ③見守り期間 | 定期的な連絡などで安否確認をおこなう業者もある |
| ④死後の作業実施 | 家族からの連絡を受け、契約内容に基づき遺品整理を実行 |
このように、生前予約は流れが明確化されているため、曖昧な口約束によるトラブルを防げます。
契約を交わすことで、親は「立つ鳥跡を濁さず」という安心感を得られ、遺族は将来の実務負担から解放されるでしょう。
「生前予約」を利用するメリット
このサービスは、親にとっても子にとっても「保険」のような役割を果たします。
- 子どもへの負担回避:業者が決まっているため、遺族が慌てて業者を探したり、高額請求の被害に遭ったりするリスクがなくなります。
- 本人の意思を尊重:「この趣味のコレクションだけは仲間に譲ってほしい」「これは捨ててほしい」といった細かい要望を、確実に反映させることができます。
- 費用の透明化:事前に見積もりを取るため、遺産から支払うのか、事前に準備するのか、資金計画を明確に立てられます。
親が「子どもに迷惑をかけたくない」という気持ちを持っているなら、無理に今すぐ処分を迫るよりも、「将来の片付けを予約して安心を得る」というアプローチの方が、受け入れてもらいやすいでしょう。
まずは一度、信頼できる業者に相談し、具体的なプランを確認してみてください。
遺品整理と生前整理に関するよくある質問(FAQ)

遺品整理と生前整理を進めるなかで、現場でよく寄せられる疑問や不安をQ&Aでまとめました。
特に、費用の節約や親子関係のトラブル回避に関する以下の点は、作業をはじめる前に押さえておきたい重要なポイントです。
- 遺品整理と生前整理は同時に進められるのか
- 生前整理で起きやすい失敗とは何か
これらの疑問についてお答えします。
Q1. 遺品整理と生前整理を同時におこなうことはできますか?
A1. はい、可能です。
実際に「老老介護をしていた母が亡くなり、残された父が施設に入居する」といったタイミングで、両方を同時に依頼される方は多くいらっしゃいます。
この場合、母の荷物は「遺品整理」として処分・形見分けをし、父の荷物は「生前整理」として施設へ持っていく物と不用品に分類します。
業者にまとめて依頼することで、トラックの手配や作業スタッフの人件費を一回分に集約でき、別々に頼むよりも費用を安く抑えられるメリットがあります。
Q2. 生前整理の失敗例としてどのようなものがありますか?
A2. もっとも多い失敗は、子どもが主導権を握りすぎて「必要なものまで捨ててしまい、親子の信頼関係が壊れる」ことです。
良かれと思って片付けた結果、親が心を閉ざしてしまい、その後の作業が一切進まなくなるケースは少なくありません。
また、不動産権利書や保険証券などの重要書類を、不要な紙類と間違えて廃棄してしまうトラブルも頻発しています。
無理に短期間で終わらせようとして体調を崩すこともデメリットの1つです。
「親のペース・親の気持ち」を最優先に進めることが成功の鍵といえます。
【まとめ】まずは「小さなアクション」からはじめよう

遺品整理と生前整理の違い、そして生前整理がいかに「家族の絆」と「資産」を守るかについて解説しました。
最後に改めてお伝えします。
実家の片付け問題は、先送りにすればするほど「問題は大きく」「費用は高く」「心理的負担は重く」なります。
まずは今日、ほんの小さな一歩を踏み出してみませんか?
- 親に電話をして「最近、家のなかで転んだりしてない?」と聞いてみる。
- 帰省した際に、冷蔵庫の賞味期限切れだけを一緒に捨ててみる。
- 実家の荷物がどれくらいの量なのか、プロに見積もり(無料)だけ依頼してみる。
特に「見積もり」は、親に「これだけの費用がかかる」という現実を知ってもらうための、もっとも効果的な説得材料になります。
「いつか」ではなく「今」、動き出しましょう。
実家の片付け・介護施設探し・不動産の売却を「1つの窓口」で解決

生前整理や遺品整理を進めるなかで、このような壁にぶつかる方が多くいらっしゃいます。
- 「片付け業者は決まったが、その後の実家を売る不動産屋も探さなければ…」
- 「親の施設入居の手続きと、家の片付けを同時進行するのは体力的にも時間的にも無理だ」
- 「認知症の親の対応について、医療的な知識がある人に相談しながら進めたい」
忙しい現役世代にとって、それぞれの専門業者を個別に探し、打ち合わせを重ねることはかなりの負担です。
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