高齢者の運転免許返納は、本人と家族にとって重要な決断であり、慎重な検討が必要です。
この記事では、免許返納の手続き・メリット・デメリット、利用できる支援制度など、あらゆる情報を網羅的に解説します。
近年、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題となっており、免許返納は事故防止の有効な手段の一つです。しかし、返納には不安や疑問もつきものです。
例えば、返納手続きはどこでできるのか、どんな特典があるのか、返納後の生活はどうなるのかなど、具体的な情報を知りたい方は多いでしょう。
この記事を読めば、免許返納に関する疑問や不安が解消され、自信を持って決断できるようになるはずです。
運転に不安を感じている高齢者ご本人、ご家族の運転を心配されている方、免許返納後の生活について知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
高齢ドライバーの免許返納とは?制度の概要と背景

近年、高齢ドライバーによる交通事故が社会問題として注目されています。
加齢にともなう身体機能や認知機能の低下が運転に影響を与える中、免許返納制度が推奨されています。
ここでは、免許返納制度の基本的な内容と、なぜこの制度が必要になったのかをわかりやすく説明します。
自主返納と運転免許取り消しの違い
自主返納と運転免許取り消しの違いを詳しく解説します。どちらを選択するべきか、判断のポイントも紹介します。
自主返納と運転免許取り消しは、どちらも運転免許が失効する点では同じですが、その手続きや意味合いは大きく異なります。
自主返納は、運転者本人が自らの意思で免許を返納する制度です。
一方、運転免許取り消しは、交通違反や認知症診断などにより、公安委員会が運転免許を取り消す行政処分です。
高齢者の運転能力と事故リスク
加齢による身体機能や認知機能の低下が、運転にどのような影響を与えるのか、具体的なデータを示しながら解説します。
加齢にともない、身体機能や認知機能は徐々に低下していきます。
これは自然な現象なので、誰にでも起こりうることです。
しかし、これらの機能低下は、運転に大きな影響を与え、事故リスクを高める可能性があります。
内閣府の交通安全白書(令和2年)によれば、75歳以上の高齢運転者の死亡事故は、75歳未満と比べ車両単独事故(工作物衝突・路外逸脱)の割合が高いです(特集-第39図)。

【出典】内閣府「第3節 高齢運転者の交通事故の状況|令和2年交通安全白書(全文)」
【免許返納を検討するタイミング】
運転に不安を感じ始めたら、免許返納を検討するタイミングかもしれません。
具体的には、以下のようなサインが見られた場合、自身の運転能力を見つめ直し、免許返納について真剣に考える必要があるでしょう。
<運転中><日常生活>
70歳未満の方でも、これらの症状がみられる場合は、免許返納を検討する必要があるでしょう。
高齢者の免許返納、手続きの流れと必要書類

免許返納を決めたら、どのような手続きが必要なのでしょうか?
ここでは返納手続きの流れ、必要な書類・申請場所など、具体的な情報をわかりやすく解説します。
具体的な手順を、下記で確認していきましょう。
返納手続きのステップ(相談→申請→完了)
免許返納の手続きは、以下の3つのステップで進められます。
【事前相談】
最寄りの警察署や運転免許センターに相談し、手続きに必要な情報を確認します。自治体によって特典や手続き内容が異なる場合があるため、事前確認が重要です。
【申請書類の準備と提出】
必要な書類を揃えた上で、運転免許センターまたは警察署で申請をおこないます。申請時には本人確認がおこなわれるため、運転免許証を必ず持参してください。
【手続き完了と証明書発行】
手続きが完了すると「運転経歴証明書」を申請できます。この証明書は身分証明書として利用できるほか、一部自治体や企業で特典を受けられる場合があります。
必要な書類一覧(運転免許証、申請書など)
返納手続きには以下の書類が一般的に必要です。
事前に揃えておくことで、申請時の手続きがスムーズになります。
- 運転免許証(原本)
- 免許返納申請書(所定の用紙)
- 本人確認書類(マイナンバーカード、健康保険証、パスポートなど)
- 必要に応じた印鑑
- その他、地域や申請窓口によって指定される書類(例:運転経歴証明書など)
【手数料】
免許返納の手続き自体は無料です。ただし、運転経歴証明書の発行には1,100円(税込)の手数料がかかります。この証明書は身分証明書として利用できるため、発行をおすすめします。
代理人による申請方法(家族など)
高齢者本人が窓口に行けない場合、家族など代理人による申請も可能です。
【委任状の書き方と注意点】
委任状には以下を記載する必要があります。
- 本人および代理人の氏名・住所・連絡先
- 委任内容(例:「運転免許返納手続き」)
- 本人の押印または署名
書式は各自治体で異なる場合があるため、確認しましょう。
【代理申請に必要な書類】
- 本人の運転免許証
- 委任状
- 代理人の本人確認書類(マイナンバーカードや健康保険証など)
代理人による申請の場合でも、本人確認が厳格におこなわれるため、必要書類を正確に揃えることが重要です。
申請場所(運転免許センター・警察署など)
申請場所 | 特徴 |
---|---|
運転免許センター | ほとんどの都道府県で即日手続き可能 |
警察署 | アクセスが便利 受付日時が限られる場合あり (事前確認推奨) |
その他 | 一部自治体では出張窓口や郵送申請も可能 |
免許返納で得られるメリット|特典・給付金・支援制度

免許返納には、経済的なメリットや、さまざまな特典があります。
ここでは、返納によって受けられる給付金や自治体独自の特典、公共交通機関の割引、運転経歴証明書の活用方法などを紹介します。
- 給付金制度(自治体による)
- 運転経歴証明書の発行とメリット
- 地域ごとの特典(タクシー券・バス割引など)
- 民間企業の特典(商品券・割引サービスなど)
詳しくみていきましょう。
給付金制度(自治体による)
自治体によっては、免許返納者に対して給付金や助成金を提供しています。
これらは公共交通機関の利用促進や生活支援を目的としたものです。
【例1:千葉県流山市】
流山市では「高齢者免許返納一時金制度」として、タクシーや路線バスで利用できる助成券(最大10,800円分)を交付しています。
【参考】流山市「高齢者免許返納一時金制度」
【例2:岩手県平泉町】
65歳以上の免許返納者に対し、公共交通利用を支援するため1万円分の助成金を提供しています。
【参考】平泉町ホームページ「すべての運転免許証を自主返納した高齢の方に助成金を支給いたします」
【例3:福島県南相馬市】
タクシー利用券(2万円分)を交付しており、移動手段確保をサポートしています。
【参考】南相馬市公式ウェブサイト「高齢者運転免許証自主返納支援事業」
これらの給付金制度は地域ごとに異なるため、自分の住む自治体の情報を確認しましょう。
運転経歴証明書の発行とメリット
運転免許証を返納すると「運転経歴証明書」を申請することができます。
この証明書には、次のメリットがあります。
【身分証明書として利用可能】
運転経歴証明書は公的な身分証明書として永年有効で使用できます。ただし、一部の手続きでは利用できない場合もあるため事前確認が必要です。
【特典の適用条件】
多くの自治体や企業が、この証明書の提示を条件に特典や割引サービスを提供しています。例えば、タクシー料金割引や公共交通機関の回数券交付などがあります。
運転経歴証明書は返納後5年以内に申請する必要があるため、早めに取得しておくことをおすすめします。
地域ごとの特典(タクシー券・バス割引など)
免許返納者向けに提供される地域独自の特典は多岐にわたります。
次にあるのはその一例です。
【タクシー料金割引】
多くの自治体では運転経歴証明書を提示することでタクシー料金が10%割引されます。例えば、大阪府堺市では65歳以上の免許返納者が対象となります。
【バス・電車利用券】
新潟県長岡市では公共交通機関利用券3,000円分が交付されます。また、山形県山形市ではタクシー券2万円分が提供されています。
【その他支援】
静岡県沼津市ではバス・タクシー利用券5,000円分が交付され、高齢者の移動手段確保を支援しています。
これら特典は地域によって内容が異なるため、自分の自治体でどのようなサポートが受けられるか確認しましょう。
民間企業の特典(商品券・割引サービスなど)
免許返納者向けに提供される地域独自の特典は多岐にわたります。
次にあるのはその一例です。
【タクシー料金割引】
多くの自治体では運転経歴証明書を提示することでタクシー料金が10%割引されます。例えば、大阪府堺市では65歳以上の免許返納者が対象です。
新潟県長岡市では公共交通機関利用券3,000円分が交付されます。また、山形県山形市ではタクシー券2万円分が提供されています。
【その他支援】
静岡県沼津市ではバス・タクシー利用券5,000円分が交付され、高齢者の移動手段確保を支援しています。
これら特典は地域によって内容が異なるため、自分の自治体でどのようなサポートが受けられるか確認しましょう。
高齢者の免許返納、デメリットと注意点

免許返納には、メリットだけでなくデメリットもあります。
ここでは、返納によって生じる可能性のある不便さ、生活の変化、心理的な影響、注意点などを解説します。
- 移動手段の制限
- 生活の変化(買い物・通院など)
- 社会とのつながりの減少
- 心理的な影響(喪失感・孤立感など)
詳しく解説します。
移動手段の制限
免許返納後は、自家用車がなくなるため、特に公共交通機関が不便な地方では移動手段の確保が大きな課題となります。
タクシー、コミュニティバス・デマンド交通などの代替手段が存在する場合もありますが、地域によっては十分なサービスが提供されていないこともあります。
利用可能な交通手段や自治体の支援策を確認し、計画的に移動手段を整えておきましょう。
生活の変化(買い物、通院など)
免許返納により、車での自由な移動が制限されると、買い物や通院など日常生活のあらゆるシーンで影響が出るかもしれません。
特に、公共交通機関が未整備の地域では、買い物や医療機関へのアクセスが困難になり、生活の質が低下する恐れがあります。
こうした場合、地域のボランティアサービスや配達サービス、家族や近隣住民との連携が重要な役割を果たすでしょう。
社会とのつながりの減少
車を利用できなくなることで、以前は気軽に外出していた高齢者が、移動の制約から外出機会が減少し、地域コミュニティや友人との交流が希薄になるリスクがあります。
社会とのつながりが薄れると、精神的な負担が増大する可能性があるため、地域の集まりや趣味の活動に参加するなど、積極的な社会交流の機会を持つことが求められます。
心理的な影響(喪失感、孤立感など)
長年運転してきた高齢者にとって、免許返納は自立の象徴を失うことに直結し、喪失感や孤立感を感じることがあります。
免許返納により安全性は向上しますが、心理的ショックや自信喪失を引き起こす可能性があるため、家族や友人、地域の支援団体による心理的サポートが不可欠です。
また、返納後の生活改善策や代替の移動手段、地域イベントへの参加など、前向きな生活スタイルへのシフトを促す情報提供も有効です。
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家族が高齢者に免許返納を勧めるには?説得のポイントと話し合いのコツ

高齢の親に免許返納を勧めるのは、難しい場合もあります。
ここでは、返納を促すための話し合いのポイント、説得のコツなどを解説します。
具体的には次のとおりです。
- 話し合いのタイミングと場所
- 高齢者の気持ちに寄り添う言葉選び
- 具体的なメリットを伝える
- 警察への相談
- 家族のサポート体制
詳しくみていきましょう。
話し合いのタイミングと場所
話し合いは、親がリラックスできる落ち着いた環境とタイミングでおこなうことが大切です。
例えば、家族が集まる食事の場や、ゆっくりと過ごせる週末のひとときなど、感情が高ぶりにくい状況を選びましょう。
また、静かでプライバシーが保たれる場所を選ぶことで、話し合いがスムーズに進みやすくなります。
高齢者の気持ちに寄り添う言葉選び
高齢者は、長年の運転経験や自立心を大切にしているため、否定的な表現や無理な説得は逆効果です。
例えば「これまで安全に運転してこられたことは本当に素晴らしいが、今後の安全を考えて一緒に新しい移動手段を探してみませんか?」といった、尊重と共感を込めた表現が有効です。
本人の気持ちや誇りを傷つけずに、未来への前向きな提案を心がけましょう。
具体的なメリットを伝える
免許返納には、交通事故のリスク低減だけでなく、
- 自治体からの給付金
- 運転経歴証明書の活用による各種優遇措置
- タクシー券やバス割引など
具体的な経済的メリットや生活支援があります。
これらの具体例をあげることで、返納後の生活がより安心で充実したものになる可能性を伝え、説得力を高めることができます。
警察への相談
免許返納に関して話し合いが難航する場合、あるいは安全面での懸念が強い場合は、地域の警察や交通安全の専門窓口に相談するのも一つの方法です。
専門家からの客観的なアドバイスを得ることで、親にも説得力のある情報を提供でき、返納の必要性を理解してもらいやすくなります。
家族のサポート体制
免許返納は、本人にとって大きなライフイベントです。
家族がしっかりとサポート体制を整え、返納後の移動手段の確保や日常生活の支援(買い物・通院など)を約束することで、親の不安を和らげることができます。
また、地域の支援制度やボランティアサービスの情報を共有し、孤立感を感じないよう環境作りに努めることも重要です。
【まとめ】高齢ドライバーの免許返納、本人と家族で話し合いましょう

高齢ドライバーの免許返納は、本人と家族にとって大きな転換点です。
ここまで紹介した免許返納の制度概要、手続きの流れやメリット・デメリット、そして説得のための具体的なポイントをもとに、家族全体で十分な話し合いをおこないましょう。
互いの意見や不安を共有し、納得のいく決断をすることで、安全で安心な未来へとつながる一歩を踏み出すことができるでしょう。
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